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建築士合格までの取り組みとは?未来の建築士を育てる中央工学校OSAKAにインタビュー!

インタビュー

建築士合格までの取り組みとは?未来の建築士を育てる中央工学校OSAKAにインタビュー!
今回は、未来の建築士を育てている専門学校「中央工学校OSAKA」に潜入!建築系の学科長で、自身も一級建築士の免許を保持する戸澤まり子さんに、学校で学べる内容や受験要件変更に伴う学校での対応、さらに学生の就職などについてインタビューしました!

お話を聞いたのはこの方

戸澤 まり子 さん
中央工学校OSAKA 建築系学科長で、自身も一級建築士の免許を保持。
1989年、京都府立大学生活科学部住居学科を卒業し、1998年まで住友林業株式会社に勤務。それ以降は中央実務専門学校(中央工学校OSAKA)専任教員として勤務して2021年で約23年に。


建築士を目指すために、学校ではどのようなことを学ぶのでしょうか?

中央工学校OSAKAでは、2年制の建築学科、住宅デザイン科、インテリアデザイン科と、2年制学科卒業後に進学する1年制の研究科という4つの学科を設置しています。2年制の3学科では各専門分野を中心に学び、1年制の研究科では建築士試験への対策を重点的に学ぶことができます。

2年制の学科でも一級・二級・木造建築士試験の受験要件を満たすことができますが、2年制の学科で学んだ後に、さらに試験対策として研究科※に進むこともでき、学科別で見ると建築学科の場合は4分の1の学生が、住宅デザイン科では、約半数の学生が研究科に進んで建築士免許の取得を目指しています。
※1年制の研究科のみでは建築士の受験資格を得ることができません。

▼各学科での学習内容

※BIMとは「Building Information Modeling」の略。建築物の企画・設計・施工・維持管理に関する情報をコンピューター上で現実と同じように再現・管理する手法のこと

学生にはひとり一台ノートパソコンを支給していて、CAD※ソフトの「ArchiCAD」やAdobe製品の「illustrator」、「photoshop」の基本操作なども学んでいきます。
※CADとは「Computer Aided Design」の略。コンピューター上で設計図を作図できるシステムやソフトのこと

さらに研究科では必修として「国内建築研修」を設けており、この研修ではグループ校である東京の中央工学校を訪問して、東京校の建築物や実験施設などで勉強をしたり、大手建築会社の研究所を見学させていただいたりもしています。

また、大阪校の校舎自体も東京都庁などの建築を手がけた世界的建築家・丹下健三氏の作品です。

メタリックでモダンな曲線を描くチタン材やガラスブロックを使った丸屋根が特徴で、わざわざ見学に来る他校の建築志望の学生もいるような、教材としても素晴らしい校舎です。

▲丹下健三氏が手掛けた1号館校舎は丸屋根が特徴


試験に向けて特に注力している点を教えてください

建築士の免許取得を目指す研究科では、9月に行われる二級建築士試験の設計製図試験まで、夏休みはお盆の1週間だけで、それ以外は毎日授業を行っています。

学科試験に向けては、試験のある7月第1週目の日曜日まで1週間のカリキュラムを組み、そのカリキュラムを毎週繰り返します。その間に5~6回の模擬テストを実施して、点数の推移を見ながら「苦手な科目でより点数を取るにはどうしたらよいか」といったアドバイスをしていきます。苦手な学生が多い科目は別途で補習を開くことも多いです。

設計製図試験に向けては、試験で求められる手書き製図の書き方を改めて指導しつつ、法規科目の授業で触れた注意点を抑えながら指導していきます。製図の試験課題が発表される6月からは、課題分析とそれに即した練習が中心となります。

一方で、学生のモチベーションの面では「受験は個人戦ではなく団体戦」であることを常に伝えています。特に、成績を伸ばす上で「チーム作り」は重要視しているポイントの1つです。

「先生に聞くよりも学生同士で教えあったほうが理解できる」という状態で試験の結果が大きく伸びる例をこれまでも見てきました。そのため、成績が上がってきた学生には他の学生に向けて「このような勉強をしました」、「このような対策が効果的でした」といった発表をしてもらうこともあります。

▲ランチやカフェが楽しめるラウンジは卒業生がリノベーションを手掛けた


建築士の受験要件が変わったことについて、学校ではどのように対応していますか?

実は、今年の3月の卒業生でさっそく一級建築士試験の合格を狙って一級建築士と二級建築士の両方の試験に申込んだ学生もいます。

そういった学生は、二級建築士試験の学習も包括する形で一級建築士の試験対策を行い、結果として一級建築士試験の合格には手が届かなくても全員二級建築士試験には合格することができました。

この結果を受けて、今年から研究科に進学した学生には、まず一級建築士試験・二級建築士試験の同時受験をアナウンスし、どれくらい関心を持つか様子を見るようにしています。また、事前に模擬テストを行い、一部の学生には一級建築士試験と二級建築士試験の両方を申し込むように促して、申し込んだ学生にはしっかりと試験に受かるための対策をしていこうと日々授業内容などを工夫しています。

今後は、ニーズがあれば新しいクラスを設けることも視野に入れつつ、授業を実施していけたらと思っています。


二級建築士免許を取得した方は、一級建築士免許の取得も目指す方が多いのでしょうか?

大阪校では一級建築士試験の合格を見据えた学生が多く、私自身からも一級建築士試験の受験を勧めています。

住宅デザイン科では、入学当初「木造住宅の2階建ての戸建てを作りたいから、木造建築士と二級建築士の免許だけ取得して一級建築士は目指さなくていい」と言う学生もいます。

ただ、私自身が住宅の設計を10年間経験してきて、一級建築士と名刺に書いてあるときと書いていないときでお客様からの信頼感が全く違うことは肌で感じていました。

さらに、お客様の満足度のために一級建築士免許の取得を促している会社も少なくありません。そのような話を学生にも伝えていくことで「やはり一級建築士も目指そう」と決める学生も多くいます。

▲「私自身、25歳と22歳の息子の母なので学生と息子たちの年齢が近く、つい親目線になってしまいます」と話す戸澤さん。


建築士を取得した学生の主な就職先について教えてください

学校全体では、地元密着型の住宅会社や建設会社に就職するケースが多いです。

学科別では、建築学科の学生の主な就職先は建設会社や設備会社、設計事務所など、インテリアデザイン科はアトリエ系の事務所を含む店舗設計施工の会社や、住宅会社、設計事務所に就職します。

また、住宅デザイン科の学生は住宅メーカーに就職する場合が多いですが、建築士の免許や試験合格を持たずに住宅メーカーに就職すると、営業職に配属されるなど設計の業務から遠くなってしまうこともあります。3つの2年制学科の中でも、研究科に進学して建築士の免許取得を目指す学生が最も多いのはそういった背景があるためです。

▲インテリアデザイン科卒業制作


建築士免許とあわせて取得するのにおススメのダブルライセンスはありますか?

建築学科と住宅デザイン科は、全員が授業の中で「建築積算士補」という資格を受験しています。

建築のコストについての基礎的な知識と意識が身に付く資格で、「どのように建物の値段が決まるのか」という視点を得ることができ、就職先でコストについての知識を一から教えてもらう必要がなくなるため重宝される資格です。

さらに選択制で2級建築施工管理技士補、2級管工事施工管理技士補、福祉住環境コーディネーター2級、ビジネス能力検定2級・3級、色彩検定2級などの対策授業を行っています。また、授業外では土曜日にインテリアコーディネーター資格試験の対策講座も開いています。

▲ガラスブロックを通して光が差し込む教室


ずばり建築士の魅力は何だと思いますか?

私たちが建築士を目指した時代は、例えば丹下健三さんや安藤忠雄さんのようなスター建築家がたくさんいて、そういった方たちに憧れ、建築士を目指しました。しかし、近年の学生を見ているとまた違った傾向があります。

近年の学生は「誰かに憧れて」という理由よりも、環境問題の解消など、社会を良くしたいという思いを持って建築士を目指しているようです。

この傾向は素晴らしいことで、授業でも「文化や社会を良くするために、建築はどうあるべきか」「住宅を通じて文化、社会、生き方、意思、個性というその人の生き方を支えるには何をすべきか」を考えていこうと話しています。

建築士は、自分がつくり出した建物や空間で何十年も何人もの人々の笑顔を生み出すことができる、魅力のある働き方ができる職業です。今後さらに建築士として活躍する方が増えることを期待しています。


いかがでしたか?

専門学校は短期間で受験資格を得られる点や、大学入試と違って入学の間口が広い点が大きな魅力です。
学生で建築士を目指す方はもちろん、キャリアの方向転換を考える社会人の方も、リカレント教育として建築士を目指すという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか?



学校法人中央工学校 中央工学校OSAKA

建築を中心とした工業系専門学校「大阪中央工学校」として1981年に開校し、今年で40周年を迎える。確かな知識と技術を有する人材を育成するための「厳しい実務教育」、豊かな社会性と創造力を有する人材を育成するための「人間涵養(かんよう)教育」をカリキュラム・ポリシーに掲げ、社会に役立つ人材を送り出すための教育活動に取り組んでいる。
公式サイトはこちら

<取材協力>
TAC株式会社
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