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資格を活かして独立するには?資格の選び方や必要な準備について解説【連載はやしかく】

コラム

資格を活かして独立するには?資格の選び方や必要な準備について解説【連載はやしかく】

『資格を活かして独立!』というのはよく見かける言葉ですが、資格を取れば独立できるわけではありません。
でも、実際に私は独立し、会社員の時よりはさまざまな面で少し自由に過ごせるようになりました(そんなに余裕がある訳では無いですが)。

そこで今回は、資格を活かした独立についてお話してみたいと思います。

業務独占資格じゃないと難しい?

まず、どんな資格が独立向き、独立可能なのか。これは多くの方が気になる部分だと思います。これについては「業務独占」があるもの、というのが一般的に言われているところです。

業務独占というのは、宅建士の場合には重要事項の説明、社労士の場合には社会保険関係手続代行のように、特定の資格を持っていないと行えない業務があるというもの(無資格者が行うと違法)。

業務独占があることにより、市場が守られ、資格者は一定の仕事がありました。しかし、最近はさまざまなサービスが充実し簡単に手続きが行えたり、業務独占があれば安泰という時代ではなくなってしまいました。

また、業務独占があるとその業務のイメージが強くなりすぎてしまい「社労士=社会保険関係の手続きをする人」とステレオタイプ的に見られてしまいがちです(実際には、コンサルティングなど幅広い業務があります)。

逆に、業務の独占は無いけれども、資格者しか名称を使ってはいけないという「名称独占」の資格もあります。これは中小企業診断士や、民間の資格の場合はこちらのタイプです。『名前が使えるだけで業務が守られないのでは、意味がないのでは?』と思う方も少なくないと思います。

しかし実際には中小企業診断士など、名称独占資格でも独立されている方は沢山いらっしゃいます。業務独占資格と異なり、ステレオタイプ的に見られにくいという部分や、比較的自由な活動ができるというのがメリットといえます。

独占業務の有無は『あった方がいいかもしれないけれど、無くても問題ない』と言えそうですね。

ターゲット(潜在顧客・市場規模)を考えてみる

独立向きかどうかは、ターゲット(潜在顧客・市場規模)を考えてみるのがおススメです。
例えば社労士の場合には、簡単に言ってしまうと「会社」が顧客になる場合が多いのですが、日本にある会社は400万社ほど。4万人の社労士がいるとすると、すべての会社が社労士を使ったとして平均1人100社の顧問先ということになります(実際の社労士関与率は4割程度など、もっと低いですが)。

では、整理収納アドバイザーはどうでしょうか。極端かもしれませんが、日本にいる1億人以上の人口、ほぼ全てがターゲットになりうることになります。もちろんそんなに簡単にはいかないですが、片づけで有名になった近藤麻理恵さんは整理収納アドバイザーから、今や活動のフィールドを世界にまで広げています。

こういったことから私は、よほど市場が小さくなければ、どんな資格でもチャンスは有ると考えています。

自分のキャリアとのつながりを意識

資格で独立しようとする方に時々見られるのが「生まれ変わろうとしている」パターン。今までの自分を捨てて、新しく「その資格の人」になろうとする方がいらっしゃいます。気持ちは分かるのですが、正直コレはおススメできません。

独立すると、さまざまな場面で「なぜあなたがそれをするのか?」「どうしてそうなったのか?」「これからどうしたいのか?」といったことを問われます。これがハッキリしていないと、他の人との違いが分からない、強みがない状態になってしまいます。こうならないようにするためにも、今までの自分との繋がりが必要ということです。

特別なエピソードが必要というわけではありませんので、ご自身のキャリアとの繋がりを意識して資格を探してみてください。

独立に最低限必要な準備

自分に合う資格を見つけ、取得したらいざ独立です。ただ「独立」というのは明確な定義があるわけではありません。

一つの目安としては、個人事業の場合は税務署に開業届を出し、自分の事業を始めたら「開業」ということになります。
しかし開業届を出すにしても、自分の屋号が必要です(必須ではないですがあった方がいい)。自分の仕事が伝わりやすいもの、かつ言いにくくない、当分使っていけるものをしっかり考えましょう。

開業すると気持ちは高まりますが、何もしなければお客さんがいませんので仕事がありません。そこでお客様を増やす事が必要になります。
ただこれもすぐには始められず、その準備として名刺など最低限の営業ツールを作らなければいけません。「名刺なんて作るのは簡単」と思うのは、たぶんまだご自身でゼロから名刺を作ったことがない方かも。名刺には、会社名や肩書、住所、電話番号、メールアドレス、ホームページ、取扱商品などが記載されるわけですが、初めて作る時にはこれらの準備がさらに手前に必要ということです。

幸い、名刺は安い金額で作り直すことが出来ますので、ある程度準備できたら作成して、徐々に内容を充実させていくと良いでしょう。私自身は、1回100枚ほどしか印刷せず、ほぼ毎回リニューアルし続けています。

名刺以外にもホームページやパンフレット、チラシなどが必要で、これらを準備すると内容によりますがあっという間に数十万円といった金額がかかることも。時間や手間だけではなく、金銭的にもそれなりに準備をしておく必要がありますね。

仕事をするのに必要な準備

実際に業務を行うためには、資格によってそれぞれ異なる準備が必要となります。
例えば社労士の場合ですと、社労士としての登録を行う必要があります。紙一枚書けばOKというものではありませんので、さまざまな添付書類を役所で準備した上で、登録に必要な費用を用意して、ようやく登録が可能になります。

他にも、業務に使うパソコンや資料を買う必要もありますし、会計の記録をつけて最終的には確定申告をするため、会計ソフトを使ったり税理士と契約する必要があります。業務そのものの準備だけではなく、こういった裏側まで準備が必要なのです。

副業という方法も

ここまで見ていて、自分にはこんな準備は無理だとイヤになってしまった人もいるかもしれません。
確かに、多くの準備を一人だけ独立してから行うのは大変なもの。そこで、できれば今の仕事を続けながら準備を進めましょう。

さらに準備だけでなく、新しい仕事をプラスアルファで始めるという方法もあります。副業・兼業です。

もちろん仕事が増えるのは大変な面もありますが、毎月給与が貰えたりといった安心出来る環境を維持しつつ、自分なりの新しい仕事に挑戦できるメリットは非常に大きいです。
私自身も、会社を辞めて完全に独立する前、2年ほどは兼業の期間がありました。この期間があったからこそ、チャレンジが可能だったと思っています(相当、大変だったのも事実ですが)。

大事なのは、あきらめないこと

独立は簡単なことではないですが、かといって不可能なことでもありません。重要なのは、やるもやらないも自分次第ということ。
資格の勉強の場合にはテキストや問題集を進めていけばある程度確実に成果が出ますが、独立には決まった正解がありません。十人十色、それぞれの理想とする独立があるからです。

簡単に理想に到達できる訳ではないので、もちろん試行錯誤を繰り返す必要があります。うまくいかないことも多いのですが、続けていれば結果は出るものです。
重要なのは、あきらめずに続けること。コツコツ、地道な努力こそが大きな結果に繋がるのです。

執筆者:はやし先生(林 雄次さん)
大手企業にてITエンジニア職を経験後、IT活用&DX推進に注力する新世代の社労士・行政書士として独立。企業の働き方改革や業務改善、IT導入などを支援する「デジタル士業」として活躍。
また、その他の士業を含む200の資格を持ち、「資格ソムリエ」としてさまざまなメディアに出演中。
Twitterhttps://twitter.com/yujihys
はやし総合支援事務所https://h-office.biz/

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